「電気通信設備を他人の通信の用に供する場合」に該当せず、非電気通信役務と解釈される具体的事例をご紹介します。

なお、以下にご紹介した事例であっても内容いかんによっては別の判断となる可能性もございますので、ご留意ください。

放送

放送は、放送法第2条1号により、「公衆によつて直接受信されることを目的とする電気通信(電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第2条第1号に規定する電気通信をいう。)の送信(他人の電気通信設備(同条第2号に規定する電気通信設備をいう。以下同じ。)を用いて行われるものを含む。)」と定義され、電波を使用して行う情報の送信、発射又は受信のうち送信の行為に着目したものをいいます。

放送は、送信目的としては、公衆による直接の受信行為を予定しているものではありますが、視聴者が不特定多数で必ずしもこれを受信してい
ることを要しないため、法律上は受信者を通信相手として観念していません(発信者の内心の意志に過ぎないということです)。

また、通常の無線通信と異なり、受信者の無線設備は、送信者たる放送事業者の関与しない範囲で設置されるものです。

一見、放送は、放送事業者が送信設備を受信者との間の通信の用に供しているように見えますが、主として一方的な番組の供給に着目したものであることから、電気通信役務に該当しないことになります。

 

企業における内線電話

内線電話とは、企業・省庁・大学などが、その従業員等が業務に関して相互に通話を行うための内線電話を、自ら設置・運営するものを指します。

法人の代表者又は法人若しくは人の使用者その他の従業員が、その法人又は人の業務に関して行う通信の場合は、その者は当該法人又は人の機関たる地位にあり、その効果は直接当該法人又は人に帰属しますから、その法人又は人の「自己」の通信であって、「他人」の通信とはなりません。

内線電話の設置・運営は、単なる自家消費である自己の通信のために行うものであることから、電気通信役務に該当しないということになります。

 

企業におけるLAN

これは、企業・省庁・大学などが、その従業員等が業務に関して相互に通信を行うためのLANを、自ら設置・運営する場合のことです。

上記の『企業における内線電話』と同様の理由により、電気通信役務に該当しません。

 

自社データベースアクセスシステム

企業などが、その営業担当者が自社のデータベースに社外からアクセスして情報提供を受けるためのシステムを、自ら構築・運営する場合のことを指します。

これについても、上記『企業における内線電話』と同様の理由により、電気通信役務に該当しません。

 

サーバの設置場所貸し

サーバの設置場所貸しとは、不動産会社などが、安定した電源設備や耐震設備などが整った建物を設置し、電気通信事業者にサーバ等の設置場所を貸し出すものをいいます。

このような場合は、空間を不動産業として貸し出しているに過ぎないことから、電気通信役務には該当しません。

 

携帯電話の代理店

携帯電話の代理店とは、携帯電話事業者等の役務提供に関する契約の締結の媒介、取次ぎ又は代理を行うものをいいます。

この場合は、単なる契約の代理等を行っているに過ぎませんから、電気通信役務に該当しません。