「他人の需要に応ずるためである場合」「事業である場合」に該当せず、非電気通信事業と解釈される具体的事例をご紹介します。

なお、以下にご紹介した事例であっても内容如何によっては、別の判断となる可能性もございますので、ご留意ください。

Webサイト開設

個人や企業などが、電気通信設備(サーバ等)を用いてWebサイト(ホームページ)を開設し、インターネット経由で自らの固有情報のみを発信する(ウェブログを含む。)場合は、電気通信事業に該当するでしょうか。

まず、「他人の通信」の概念には、自己と他人との間の通信を含むことから、自己の電気通信設備をWebサイト閲覧者(他人)との通信に使用することは、通信相手たる他人の通信の用にその設備を供していることとなり、電気通信役務に該当します。

ですが、自らの固有情報を発信する手段として電気通信役務を提供することは、自己の需要に応ずるためのものであることから、電気通信事業に該当しないということになります。

 

ネット通販

ネット通販のように、小売業者などが店舗や電話等により行う顧客からの要求(注文や問合せ等)への対応(小売業者の本来業務)に加え、又はこれに代えて、電気通信設備(サーバ等)を用いてWebサイトを開設しインターネット経由で顧客からの要求に対応する場合は、電気通信事業に該当するでしょうか。

まず、上記『Webサイト開設』と同様の理由により、電気通信役務には該当します。

しかしながら、電気通信役務を必ずしも前提としない別の自らの本来業務の遂行の手段として電気通信役務を提供することは、自己の需要に応ずるためのものであるとの理由により、電気通信事業に該当しないことになります。

 

ネットバンキング

ネットバンキングのように、銀行が窓口や電話等により行う顧客からの要求(振込依頼や残高照会等)への対応(銀行の本来業務)に加え、又はこれに代えて、電気通信設備(サーバ等)を用いてWebサイトを開設しインターネット経由で顧客からの要求に対応する場合は、電気通信事業に該当するでしょうか。

これについては、上記『ネット通販』と同様の理由により、電気通信事業に該当しません。

 

ネット証券

ネット証券のように、証券会社が窓口や電話により行う顧客からの要求(株式の売買依頼等)への対応(証券会社の本来業務)に加え、又はこれに代えて、電気通信設備(サーバ等)を用いてWebサイトを開設しインターネット経由で顧客からの要求に対応する場合は、電気通信事業に該当するでしょうか。

これは、『ネット通販』と同様の理由により、電気通信事業に該当しません。

 

ネット座席予約

航空会社やバス会社などが窓口や電話により行う顧客からの要求(座席予約等)への対応(航空会社等の本来業務)に加え、又はこれに代えて、電気通信設備(サーバ等)を用いてWebサイトを開設しインターネット経由で顧客からの要求に対応するネット座席予約は、電気通信事業に該当するでしょうか。

これは、『ネット通販』と同様の理由により、電気通信事業に該当しません。

 

メールフォーム

企業や地方公共団体などが電話等により受け付ける顧客や住民等からの問合せ等に加え、又はこれに代えて、電気通信設備(サーバ等)を用いてWebサイトを開設しインターネット経由で顧客や住民などからの問合せ等を受け付けるメールフォームは、電気通信事業に該当するでしょうか。

これは、顧客や住民などからの問合せ等を受けるに当たっての電気通信役務の提供であることから、『ネット通販』と同様の理由により、
電気通信事業に該当しません。

 

電子メールマガジンの発行

企業などが郵送や広告紙面により行う顧客に対する広報(自社製品の宣伝やイベント開催案内等)に加え、又はこれに代えて、予め登録した顧客等に対して電子メールによる広報等を行う電子メールマガジンの発行は、電子通信事業に該当するでしょうか。

これは、本来業務に関する情報を顧客に対して広報するに当たっての電気通信役務の提供であることから、『ネット通販』と同様の理由に
より、電気通信事業に該当しません。

 

非常災害発生時における緊急通信のための電気通信設備の利用

非常災害が発生し、現に応急的な救助を行う必要がある場合に、厚生労働大臣、都道府県知事などが、その業務に関し緊急を要する通信のため、電気通信事業者がその事業の用に供する電気通信設備を優先的に利用する場合は、電気通信事業に該当するでしょうか。

これは、非常事態時に緊急、臨時的に行うものであることから、電気通信事業に該当しません。

なお、
○ 水防上の緊急通信(水防法第20条第2項)
○ 災害に関する予報又は警報に係る緊急通信及び災害発生時の応急措置の実施に必要な緊急通信(災害対策基本法第57条及び第79条)
○ 地震災害に関する警戒宣言が発せられた場合の緊急通信及び応急措置の実施に必要な緊急通信(大規模地震対策特別措置法第20条及び第26条第1項)
等のための電気通信設備の利用も、同様の理由により、電気通信事業に該当しないことになります。

 

ホテル電話

ホテル事業者等が、宿泊サービスの一環として、宿泊者間の内線通話及び宿泊者から外部の者への外線通話を可能とするために、電話を設置・運営するホテル電話は、電気通信事業に該当するでしょうか。

宿泊サービスに付随して電話の設置・運営を行っており、電気通信役務の提供が独立した事業として把握できないことから、電気通信事業に該当しません。

 

ホテルインターネット

ホテル事業者等が、宿泊サービスの一環として、宿泊者のインターネット利用を可能とするために、端末やインターネットサービスを提供するホテルインターネットは、電気通信事業に該当するでしょうか。

これについては、『ホテル電話』と同様の理由により、電気通信事業に該当しません。